つかむ!ジャーナリストの目で。川村範行 名古屋外国語大学 外国語学部 特任教授 日中関係論、現代中国論、メディア論、日中メディア比較論

安倍首相の靖国参拝にコメント


安倍首相の靖国参拝にコメント


2013年12月26日

 
 

安倍首相の靖国神社参拝について、12月26日夜、FM東京の生番組に電話出演し、次のようにコメントしました。

  
1、安倍首相が政権発足1年目の節目に宿願の靖国参拝を実施したことは、外交面を配慮しない行動である。
安倍首相は2006年、就任直後に訪中し、胡錦濤国家主席と会談し、小泉時代の「政冷経熱」を打破した。その時の条件は靖国参拝をせず、曖昧にするということだった。
日中関係の新たな枠組みとなる「戦略的互恵関係」の基礎をつくった功績がある。
今回は自ら小泉首相の轍を踏み、戦略的互恵関係の前提条件を崩したことになる。
「対話の窓は開いている」「戦略的互恵関係に立ち戻る」と言いながら、首脳会談の可能性をゼロにした。個人の信念は通したが、首相としての自己矛盾を露呈した。

  
2、日中関係は尖閣国有化決定後、国交正常化以来で最悪の対立関係に陥ったが、
双方が改善の糸口を模索しているときに、首相自らその芽を決定的につぶしてしまった。
特に、12月に入り、国家安全保障計画や新防衛計画の中で、中国を「仮想敵国」視するような記述が盛り込まれた。これに対し、中国の内部情報によると習近平指導部は何らかの対抗姿勢にでるとの観測も出ていた矢先である。
中国の強硬派に次々と口実を与えることになり、日中対立構造は一層エスカレートすることが必至となる。

  
3、米国の「失望した」という声明は異例であり、日米関係をも不安定にしかねない。
尖閣の海、空ともに日中の偶発的トラブルから軍事的衝突の危険性が高まっており、
米国はアジア回帰戦略上、日中の衝突回避に神経をとがらせているときである。
またオバマ・習近平首脳会談以降、米中両国は新型大国関係の構築に向けて様々なチャンネルが動き出しいている。
米国は中国との対立を避けるためにも、尖閣の問題では一方的に日本の肩を持つようなことはしない。
日韓関係のさらなる悪化も避けられない。
領有権にとどまらず歴史認識問題はアジア関係国のみならず、国際社会への挑戦と映る。
いくら関係国に説明するといっても到底理解されない独りよがりの理屈である。
大局に立ったうえでの行動とは思えない。
安倍首相のこれまでの言動は第二次大戦の戦後秩序を否定する歴史修正主義者だと見られており、今回の行動によりますます安倍政権が東アジアの国際関係の中で孤立する恐れがある。安倍首相は外交上、自ら手足を縛り、日本外交の将来に大きなマイナスを生じた。