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「靖国参拝問題」中国のテレビ局特番に出演

2014/01/14


中国のテレビ局特集番組に出演


2014年1月1日

元日早々に中国広東省の深圳衛星テレビ局から「安倍首相の靖国参拝」について電話インタビューを受けた。当日夜の報道特集番組「関鍵洞察力」(キーポイント洞察力)で中国全土に放送された。テレビ局は主に①日本の大衆は外交に影響するのに、なぜ安倍首相の靖国参拝を支持するのか。②安倍首相は日米関係への影響を考慮せず靖国参拝を決行したのか―という疑問を提起した。日本人学者・研究者が日中関係のホットなテーマについて中国のマスコミに中国語で解説することは極めてまれであり、責任は大きい。日本人の靖国意識や安倍首相の政策判断について、更に中国側と意見を交換する必要性を感じた。

以下、一問一答。
*「関鍵洞察」http://www.s1979.com/yule/201305/guanjiandongchali.html

1、日本の大衆は安倍首相の靖国参拝について外交面で緊張を引き起こす可能性を心配しているが、参拝そのものに対しては大部分の日本の大衆はなぜ妥当だと考えているのか。日本の大衆は戦犯に参拝することは誤りだと考えていないのか。

川村;安倍首相の靖国神社参拝について、日本の大衆のうち半数は妥当ではないと考えている。日本の大衆の最新の意識状態を紹介しよう。共同通信社が12月28、29両日、行った全国世論調査の結果である。安倍首相の靖国神社参拝を「肯定」するのが43.2%、「否定」するのが47.1%で、否定が肯定をやや上回る。

「肯定」の理由は①「首相が靖国神社で戦没者を慰霊するのは当然である」が48.6%。

②「参拝は外国から影響を受けるべきではない」が39.9%。「否定」の理由は①「近隣外国との関係に影響する」が74.2%。②「東京裁判のA級(甲級)戦犯が祭られている」が15.3%。

外交関係に考慮する必要があるかどうかについて、「必要ある」が69.8%、「必要ない」は25.3%で、外交関係に配慮すべきとの意見が圧倒的に多い。

次に、A級戦犯の分祀について、「賛成」が49%、「反対」が34.6%と、賛成がやや多い。

結論として、日本の世論を分析すると、安倍首相の靖国神社参拝について、ほぼ半数が外交への影響を主な理由に妥当ではないと受け止めているが、賛否はほぼ拮抗している。

一般の日本人は死者の御霊に参拝するのは自然であり、死者の御霊は戦犯・非戦犯を問わないと考える日本人は多い。その延長として首相が国のために命を落とした戦没者に参拝するのは当然であり、外国から抗議を受ける筋合いはないという考えが出てくる。中国人は死後も悪人は悪人として扱っており、日本人の考え方と異なる点に注意すべきだ。

2、日本の政治家は死んで魂になったら問わないと言っているが、西郷隆盛のような人が靖国神社に祭られないのはなぜか。靖国神社は死者を区別しているのか。靖国神社は軍国主義を宣伝する特殊な場所になっているのではないか。

川村;靖国神社は日本の軍人・軍属を「英霊」として祭る唯一の場所である。英霊とは国の為に命を落としたら、神になるという意味である。明治時代から先の大戦までは、旧日本軍の陸軍と海軍が祭事を統括しており、軍国主義の発揚に重要な役割を果たしていた。戦後は宗教法人となったが、首相の靖国公式参拝を要求している。

祭られているのは合計246万柱で、日清戦争、日露戦争、第一次大戦、日中戦争、第二次大戦の戦没者などである。幕末・明治維新や西南戦争の戦没者も含まれているが、いずれも新政府軍だけであり、西郷隆盛のように新政府に逆らった人たちは靖国神社には祭られない。また、A級戦犯14人は1978年に秘密裏に靖国神社に祭祀され、天皇陛下もそれが原因で1975年11月を最後に靖国参拝を止めているとされる。

3、遺族会は政治とどうつながっているか、首相や内閣閣僚の靖国参拝にどの程度の影響力を持っているか。

川村;日本遺族会は1947年に設立され、英霊の検証と遺族の生活保障を主な目的にしている。会員数は約100万世帯で、先の戦争を肯定している人がほとんどだ。靖国神社の国家運営と首相の公式参拝を求めて活動している。傘下に政治団体・日本遺族政治連盟を擁し、自民党を支持し、自民党総裁選挙や国会議員の選挙で圧力団体となっている。特に小泉純一郎が総裁選挙で遺族会の支持を受け、当選したら靖国参拝の約束を果たしている。

4、米国は安倍首相の靖国参拝に対し「失望した」と表明したが、日本側は本当に米国の反応を意外感をもって受け止めたのか。

川村;米国駐日本大使館や米国政府は「隣国との緊張関係を激化させることになり、失望した」と異例の声明を発表した。日中、日韓関係だけでなく、日米関係にまで悪影響を及ぼすことが明らかになった。安倍政権でこの点を予想した人は少なく、意外感と日米関係へ懸念を抱いた人が多い。

5、日本側は安倍首相の靖国参拝を控えるようにとのオバマ政権のシグナルを受け止めていたのか。それとも安倍首相は故意に逆らうような行動に出たのか。

川村;安倍政権の中にはオバマ政権の意向を受けて安倍首相に進言した人もいるが、安倍首相は聞く耳を持たず、外交への影響を顧みず、自らの信念を貫いた。参拝後に記者団に「中国や韓国の人たちの感情を傷つけるつもりはない。両国首脳に真意を説明したい」と述べたが、こうした矛盾した言動は到底受け入れられるものではない。だが、12月22、23両日と28、29両日の参拝前後の全国世論調査結果(共同通信社)を比較すると、安倍政権支持率は54.2%→55.2%、不支持率は33.0%→32.6%と、ほとんど変化ない。安倍首相は対中、対韓の世論動向を測った上で参拝決行し、支持率不変に安心しているに違いない。

6、最後に日中関係に対する考えを。

川村;私は一貫して日中関係の重要性と日中関係の改善を、日中双方に主張している。今後も学会や大学で日中間の相互理解のために活動を続ける。

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