更新情報

講演「日中対立の背景と見通し」

2026/01/24

東海日中関係学会 2026 年新春公開研究会
講演「日中対立の背景と見通し」(要旨)

東海日中関係学会会長 川村範行・名古屋外国語大学名誉教授

 

 
【中国は高市内閣を警戒していた】
訪中団長として11月4 日、外交部高官と懇談、社科院日本研究所研究者7 名と意見交換した。
①高市内閣を極めて警戒。歴史認識問題(靖国参拝を公言)と台湾問題(日華議員懇談会の幹部)の2 点から。だが、所信表明「日中関係を重視する」を考慮し、首脳会談へ。
②10 月30 日の日中首脳会談翌日、台湾の前行政院副院長と対談、X に「台湾総統府資政(顧問)」と記し、写真投稿。「一つの中国」原則に触れる問題だが、外交部報道官の抗議に留まる。
③中国側は、安倍後継者を任じる高市首相に現実政治家へ“君子豹変”の望みを抱いた。しかし、11月7 日発言で絶たれる。→発言撤回要求→訪日自粛、海産物輸入停止の対抗策、年明けレアアース輸出規制で経済締め付けへ。
 
【高市首相発言の何が問題か】
・現職首相が国会答弁で、中国が台湾を海上封鎖した場合、米軍の援軍として自衛隊を出し中国と武力行使する可能性があると初めて示唆した。
・日本が戦後初めて中国に対し戦争の可能性を示した。中国は日本を武力行使の対象として敵視せざるを得ない。東アジア周辺国に不安と警戒を呼び、安全保障上の緊張を生み出す。
・日中国交正常化共同声明で日本は「中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府であると承認」し、 「台湾は中国の領土の不可分の一部であるとする中国の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項(注 台湾、澎湖島を中華民国に返還する)を堅持する」とした。発言は中国の「核心利益中の核心利益」台湾問題に踏み込み、内政干渉となり、日中関係の基礎を崩しかねない。
 
【高市発言と事実上の修正? “存立危機事態”】
高市首相は11 月7 日の国会答弁で「中国による海上封鎖で戦艦を使って武力行使を伴うものであれば、どう考えても日本にとり存立危機事態になり得る」と、明言。その前段で「海上封鎖を解くために米軍が来援する。それを防ぐために武力行使が行われる場合」と。
11月10 日の国会答弁で(発言そのものは撤回せず) 「反省として今後特定のケースを想定したことを明言することは慎む」「7日のやりとりを政府統一見解として出すつもりはない」。
「存立危機事態」とは、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」。質問主意書に対する閣議決定(11月25日) ; 「一般に、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについて、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ちうる全ての情報を総合して、客観的かつ総合的に判断することとなる」
 
【“台湾有事”とは何か】
バイデン政権:中国牽制・対中封じ込め“台湾カード”
2021 年に米軍幹部が中国の台湾侵攻を「数年以内」「2025 年までに」と発言。
安倍元首相「台湾有事は日本有事」、日本国内でも懸念拡大。
中国を睨んだ南西諸島の“日米共同作戦”、ミサイル基地強化へ。
2022 年12 月、岸田内閣が安全保障政策を大転換。防衛3 文書を閣議決定。
*中国=「最大の戦略的挑戦」(“仮想敵視”?)
①敵基地攻撃能力(反撃能力)を認定:「専守防衛」逸脱
②防衛予算倍増(米ミサイル大量購入):GDP1%枠を撤廃
 
【中国の台湾政策】
鄧小平-江沢民-胡錦濤-習近平:一貫して「平和的統一」を堅持
習近平:2022 年第20回共産党全国大会で演説「最大の誠意を以て平和的統一を目指す。
台湾独立、外国勢力による独立支持に対し“武力行使“を放棄せず」
今後5 年間の優先政策20 項目を提示:「祖国統一」は18 位
*軍事侵攻は大陸も被害、共産党批判へリスク大きい。最近は無傷で台湾を取る「新型統一戦争」を研究、
*日本は1972 年の日中国交正常化で、台湾とは断交。
台湾とは国交も軍事同盟も無い。自衛隊派遣の権利も義務もない。在台邦人救出は人道活動。
 
【東海日中関係学会声明11月24 日「日中関係の悪化を憂慮し、早期の関係修復を求める」】
「打開に向けた対応5項目を提案し、日中両国政府に理性的な対応を要望する」
2000 年代初頭の靖国参拝問題や2012 年の尖閣問題による両国の関係悪化時に、親書や特使を含めて対話と協議による外交努力で首脳会談実現し関係修復を図った過程を範とする-声明で提示。
 
【対立関係をどう修復するか・・中国は今後どう対応するか】
12月、中国関係高官と2時間余懇談した。
(1)「2012年の島の問題より、重大かつ深刻」 。
「高市首相が発言撤回しないなら、高市内閣が続く限り日中対立は続く」 。長期化は必至。
(2)当方から提案①対話と協議による外交努力 → 「当面は、動けない。難しい」 。
(3)当方から提案②経済交流、民間交流を元に戻す →「“タイミング”がないと難しい」 。
交流の中断・停止は、対中感情を悪化させ、高市内閣の支持率を高める?
*反中・親台派で固めた高市内閣は、“中国依存度減らし”“脱中国”。冷めた日中関係へ。
 
【米中関係の変化と日本外交の対応】
トランプ大統領「中国との関係はとても良い」「G2(米中による支配)」4月訪中、首脳会談。2025年11 月24日、トランプ大統領と習近平国家主席が台湾問題含めて電話協議。
翌25 日、トランプ大統領と高市首相が電話協議。「台湾について中国政府を挑発しないよう助言した」(米紙、朝日新聞)。官房長官は否定。
*米安保戦略転換:「世界秩序を支える時代が終わった」“ドンロー主義”日本外交見直しを。

お知らせ一覧

2026.10.17
武漢大学の国際フォーラムに日本からただ一人招聘講演
2026.10.03
講演「戦後最も深刻な日中関係をどう乗り越えるか」
2026.09.07
日中関係修復のシナリオを提示 『日中「冬の時代」の行方』を出版
2026.05.23
講話「日米・米中首脳会談と日中関係への影響」
2026.01.24
講演「日中対立の背景と見通し」
2025.11.26
日中両国政府に早期関係修復を求める緊急声明
2025.10.10
中国中央テレビ(CCTV)の取材受け、ニュースで録画放送
2025.08.22
中国《澎湃新闻》にインタビュー記事掲載
2025.08.18
「欧州・アジアの結節点」新疆ウイグル自治区ウルムチ・カシュガルを視察
2025.08.03
中日平和友好交流会で学界代表として講演
2025.07.25
中国中央テレビに出演、『中国日報』などでも報道 ~参院選結果の論評~
2025.07.07
武漢大学主催の戦後80周年記念国際シンポジウムで日本人唯一の招聘講演
2025.06.12
中国大使館主催の中日メディアサロンで特別講演
2025.05.24
日中関係学会全国大会で開会挨拶
2025.03.28
日中共同建設桜友誼林保存協会訪中団の顧問として訪中
2025.01.22
東海日中関係学会2025年新春公開研究会
2025.01.21
[2025.01.25] 時論「結成20周年 ジャーナリスト訪中団の成果と教訓」
2024.12.08
上海外国語大学75周年国際シンポジウムで講演(日文・中文)
2024.11.23
時論『孫文「大アジア主義」演説の現代的意味~「日本よ アジアに立脚し中国と協調外交を」~』
2024.09.28
中部学術訪中団総括報告「リアル中国を知る~上海・浙江省での交流成果と中国の実情~」
2024.05.23
[2024/07/05開催] 講演 名古屋ピンポン外交の教訓
2024.05.23
[2024/6/30開催] 国際理解講演会 世界を左右する中国の『長期戦略』
2024.05.23
[2024/6/26開催] 日中山河経済文化促進会 特別講演会 (熱田神宮会館)
2024.01.27
時論「中国主導の世界は可能か- 新たな発展理念“人類運命共同体”白書から -」
2023.12.09
第8回日中関係討論会 基調報告「武力ではなく、外交と交流により、東アジアの平和を」
2023.10.15
時論 「ポストコロナ初の学会訪中団を受け入れた中国- 日中間の対面交流の意義-」
2023.05.13
時論 客観的、理性的に日中関係を論じて30年
東海日中関係学会設立30周年記念・日中平和友好条約締結45周年記念シンポジウム
開会挨拶
2023.03.23
「大江健三郎平和主義思想及び其の現代価値」シンポジウム報告 
2023.03.22
時論 大江健三郎氏を偲ぶ北京シンポジウムへのメッセージ
2023.01.28
時論 中国敵視・安全保障政策の危うさ~日中関係改善の好機を逃すな~