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講話「日米・米中首脳会談と日中関係への影響」

2026/05/23

東海日中関係学会 2026 年度春季公開研究会
講演「日米・米中首脳会談と日中関係への影響」 (要旨)

東海日中関係学会会長 川村範行・名古屋外国語大学名誉教授

 
主旨
1,イラン攻撃、ウクライナ戦争、ガザ侵攻など、大国の「力による支配」により、第二次世界大戦後の国際秩序が崩壊しつつある。特に、トランプ 2.0 の安全保障政策の転換「力による平和」「力による抑止」。
2, 3 月に訪米した高市早苗首相とトランプ大統領の首脳会談で何が“密約”となったか。
3,5 月半ばに訪中するトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談により、米中関係に変化が予想される。“台湾有事”を巡る高市首相発言をきっかけに悪化した日中関係への影響も避けられない。
*転換期の日米、米中、日中関係(日米中三角関係)から目が離せない。
 
1-1、米国の安全保障政策の転換(1)
2025 年 12月、「米国国家安全保障戦略」発表
「世界秩序を支える時代が終わった」
西半球(南北米大陸)の安定・防衛を最優先する“ドンロー主義” を掲げる。
米国第一主義を再強調。
⇒ベネズエラ攻撃、イラン攻撃(今後はキューバ攻撃、カナダ併合、グリーンランド買収?)
*(モンロー主義:1823 年 モンロー大統領“西半球に手を出すな”:米墨戦争)
中国を最大且つ最重要の「戦略的競争相手」とみなしつつ、全面的な対決を避けて、抑止力による台湾海峡の現状を維持する。
欧州や中東では、同盟国が主体的に防衛努力を行うことを求める。米国は不足分を補う形態へ移行。
*アメリカの安全保障戦略の大転換:「力による平和」を基本方針 世界は脱米国化へ?
 
1-2、米国の安全保障政策の転換(2)
2026 年 1 月23日、米国防総省国家国防計画(NDS)公表
米軍は同盟国との統合軍が常に米国本土から直接攻撃することも含め、世界のどこの標的に対しても壊滅的な攻撃と作戦を実施する能力を持つようにする。
「力による抑止」での防衛強化を打ち出す。
第一列島線(九州・沖縄~台湾~フィリピンを結ぶ)に沿った防衛力を日本など同盟国との協力で強化する。
「中国を支配し、屈辱を与え、締め上げることが目的ではない。体制転換や存亡を賭けた闘争も必要ない。米国人に有利でありなから、中国も受け入れ、その下で生活できるような条件でも平和は可能である。」
「防衛費の新たな世界基準」を規定:合計 GDP 比5%
(GDP 比:中核的防衛費 3.5%、関連経費 1.5%)
「我々は欧州だけでなく全世界の同盟国・友好国に対し、この基準を提唱する」
【日本の防衛費?】
2025 年度合計約 11兆円:GDP比 2%目標を前倒し達成
GDP 比3%=約 21 兆円、GDP比5%=約 30 兆円
高市首相 3月訪米:首脳会談で防衛費増額要請あったか?
 
2-1,日米首脳会談(1)
高市早苗首相・トランプ大統領、2026年3月 20日、米ホワイトハウス
トランプ氏:ホルムズ海峡の安定確保に向けた日本の努力を評価し「北大西洋条約機構(NATO)とは違う」と述べた。
高市首相:「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と強調し「諸外国に働きかけてしっかり応援したい」と言及。艦船派遣を含む航行の安全確保については「法律の範囲で今後もできることをしっかり取り組む」と述べた。
トランプ氏「中国へ行ったら、習近平国家主席に日本の素晴らしさを話すつもり。両国の関係は少しギクシャクしていると思うので」
高市首相「日本はいつも中国に対してオープンだ。冷静に対応している」
米政府発表の成果文書(ファクトシート)に記載:『台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄に不可欠』(日本外務省は記載なし)
 
2-2、日米首脳会談(2) 密約?
米政府発表の成果文書(ファクトシート)に以下記載:(日本外務省は記載なし)
『自国の防衛力を迅速に強化し、防衛予算を増額し、日本と周辺地域に駐留する米軍との連携を継続するとの日本の決意を米国は歓迎した。』
『日米両国は、強力な拒否的防衛体制を築くため、日本国内に先進的な装備を配備するとの決意を確認した。』
⇒敵の防衛ミサイル攻撃を無力化、若しくは被害を軽減する態勢を取る。
⇒日本に迎撃ミサイルを更に多く配備する、即ち最新式パトリオットを配備する。
⇒“迎撃ミサイルを沢山生産して貴国にも提供いたします”約束?
三菱重工が、パトリオットミサイルをライセンス生産している。
弾道ミサイルを打ち落とすための迎撃ミサイルについて「日本でのライセンス生産を速やかに 4 倍にする」と明記。
 
3-1、米中関係
米国家情報長官室(CIA・FBIを統轄)の世界の脅威に対する年次報告書
2026 年 3 月18日発表
◎「台湾有事は存立危機事態になり得るとの高市首相の国会答弁は、軍事行動の法的根拠となりうるため日本の制度上『重みがある』 、現職首相として重大な方針転換を示すものだ」と指摘。
「反発する中国が対日圧力を強め、予期せぬ『事故』のリスクが高まる」と警告。
木原官房長官は 3 月 19 日の記者会見で、「重大な方針転換との指摘には当たらない」と反論。
◎報告書:「中国は現時点では 2027 年に台湾侵攻の計画はなく、統一実現の期限もない」、
「中国軍は上陸を伴う侵攻は極めて困難であると認識している。武力衝突を避ける形での台湾統一を優先させている」と分析。
「中国が将来の統一を見据えて米軍の介入を阻止する能力を着実に発展させている」と説明。
 
3-2、米中関係 トランプ・習近平 度々電話会談
2025 年 11月 24日、トランプ大統領と習近平国家主席が台湾問題を含む電話協議。「中国との関係はとても良い」
翌 11 月 25日、トランプ大統領と高市首相が電話協議。「台湾について中国政府を挑発しないよう助言した」(米紙、朝日新聞)。官房長官は否定。
2026 年 2 月4日、トランプ・習近平の米中首脳電話会談2時間
トランプ SNS「中国との関係、私と習近平国家主席の個人的な関係は極めて良好だ」
新華社電:習近平「台湾問題は中米関係において最も重要な課題だ」「台湾が分離することは永遠に許されない。米国は対台湾武器売却問題を慎重に扱うべきだ」「(台湾への武器売却は)最大限の慎重さ」を以て対処するよう異例の踏み込んだ発言。 トランプ大統領「私は台湾問題における中国の懸念を重視している」
 
3-3、米中首脳会談の延期とデイールの行方
2026 年 3 月31日~4月2 日⇒5月14日・15日へ
米国:トランプ訪中、イラン攻撃で延期。2 期目で初訪中、2017 年以来。
中国:「友好国イランが攻撃を受けている最中にトランプ氏訪中を迎え、祝杯を挙げるわけにはいかない」(中国メディア)。
トランプ「(習近平国家主席との首脳会談)訪中は素晴らしいものになる」
①秋の中間選挙に向けて有利な取り引き:年内に米中首脳会談4 回予定。
中国が米農産品などの大量購入、レアアースの対米輸出緩和
②ベネズエラ、イラン攻撃で、中国の友好国、産油国標的に、中国への打撃を狙った?
同盟国ではないので、中国は軍事支援できないジレンマ?
習近平「中米関係を安定的かつ健全で持続的な発展の軌道に乗せる」
①衝突を避け、米国農産品や他米国産品の購入などを用意
②台湾問題で米国による武器輸出の制限、台湾独立不支持の確約
3-4、米中関係 したたかな中国:イラン戦争で漁夫の利か
「中国はイラン戦争の最大の勝者になる」(台湾の国民党の前駐米副代表)
①石油輸入の打撃は少ない。2003 年の米国のイラク侵攻を教訓に、石油備蓄を増強。ロシア、サウジアラビア、イラクなど各国からの原油輸入量も輸入総量の 15~20%基準値以下に抑えている。
②石油不足やその他エネルギー資源不足に直面したベトナムとフィリピンが中国に支援を求めた。
③停戦交渉で存在価値発揮:関係各国と王毅外相、中東問題担当特使の翟軍氏の電話会談。
習近平国家主席はアブダビの皇太子と会談、サウジアラビアのサルマン皇太子と電話会談。
④「『ペトロダラー』」(石油ドル)の支配力を弱め、『ペトロユアン』(石油人民元)の台頭を促す触媒となり得る」(ドイツ銀行幹部)
⑤米軍の AI 利用攻撃、空母打撃群展開や、イランの安価なドローンによる対米反撃など、最新の軍事戦術を学ぶ絶好の機会となった。
 
4、中国の外交方針
王毅外相 2026 年 2月 13日、ミュンヘン安全保障会議でルビオ国務長官と会談
「中米関係においては、対立より対話が望ましく、紛争より協力が望ましく、ゼロサムゲームよりウィンウィンが望ましい。・・両国は共に努力し、協力リストの項目を増やし、問題リストの項目を減らし、中米関係を安定的かつ健全で持続的な発展の軌道に乗せ、世界により多くのポジティブな情報を発信すべきだ」
王毅外相 2026 年 3月 8日、全人代開催中の記者会見「中国外交政策と対外関係」
「2026 年が、中米関係がより健全で安定的かつ持続可能な発展へ向かう重要な節目の年になると信じる」
李強総理 2026 年 3月 5日、全人代での政治活動報告
「我々は覇権主義やパワー・ポリティクスに反対し、あらゆる形態の一国主義、保護主義に反対し、国際的な公平と正義を守る必要がある」と指摘。
「中国は国際社会と共に、平等で秩序ある世界の多極化、普遍的に恩恵をもたらすインクルーシブな経済のグローバル化を提唱し、人類運命共同体の構築を後押しし、世界が平和的に発展する素晴らしい未来を共に創造することを望んでいる」と強調。

講話「日米・米中首脳会談と日中関係への影響」|つかむ!ジャーナリストの目で。川村範行(かわむら のりゆき) 名古屋外国語大学 外国語学部 特任教授 日中関係論、現代中国論、メディア論、日中メディア比較論

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